無意味

彼が私に教えてくれたことは、人間関係において平行はないということだ。平行なんて存在しなくて、必ずどこかでちょぴっとズレてしまう。そして一瞬交わる。スピードも角度も交わりの数だけ異なるから、一瞬で過ぎ消え去る垂直な交わりもあれば、まるで永遠のような交わるもある、のだろう。だけどとにかく、人間は流動的なものだ。だから進む。進む。止まらない。交わったその瞬間に止まることもあるのかもしれないけど、結局進む。だけどたまに、どちらかの将又双方の角度が変わってもう一度交わるなんてこともある。引力とかいうのはそういうことだ。角度もスピードも違うのだから、その交わりはこの世界で唯一無二である。私は彼に何かを教えることが出来たのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひょんなことから三年振りに、昔好きだった人に会った。「好きだった人」という表現が適切なのかは分からないけど、簡単に纏めるとそういうことだと思う。別にもう時間は戻らないし戻って欲しいとも思わない。ただ私たちはいつも何が正しいのか、どうして寂しいのか、よくわからないまま生きてる。似ているところはこれだけだ。そうやっていつの間にか五年が経った。分かりきっていたけど、私たちは深く交わっているように見えて特に何も交わっていなかった。「こうやって意味のない話する感じ、懐かしいなー」って言ってたけど、私にとってそういう話は全て意味のある話だったんだよ。